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ちづえ14世さんの遺書
成熟
駅のホームで電車が来るのを待っているあたしの後ろから
ふたりでしゃべっている男の人の声が聞こえてきた。
首をマフラーの中にひっこめて、あたしはその声を聞いていた。
A「サラリーマンになると学生の頃みたいに新しい出会いがなくなってきて、
視野がどんどん小さくなる気がする。」
B「視野が小さくなるのは決してマイナスじゃなくて、
それは成熟してきたってことだよ。
時間と経験はどんどん進んでるから後退はないんだよ。」
成熟か・・・。
なんかこれってすごくためになるいい話しじゃん。
そして電車が到着。
あたしは流されるまま、空いていた席に座った。
もう一度男の人たちのすぐそばで話しの続きを聞いていたかったけど、
多分だいぶ離れたんだと思う、声は聞こえなくなったから。
成熟か...。
向かい合わせの席の窓ごしであたしは目をつむって、
さっき聞いた話しについてあたしなりに考えてみた。
成熟→木の実がよく熟れてぽとっと下に落っこちる→手で拾う→食べる
それは食べたかった頃、イメージしていたものに近い味なんだろうか。
あんなに食べたくていつも上ばかり見ていた頃、木の実とともにあった自分。
食べたらなくなってしまう?けど食べる、
だってそのためにずっと待ったし、考え続けたし。
でも今いちお腹がすいていない・・・気がする。
前はもっとお腹がすいてペコペコだった・・・気がする。
空腹の時に木の実が食べれればもっとうまいと思ったんじゃないか。
食べたらなくなる?そう、それはなくなる。
芯だけ残してお腹に入る。
でも食べなきゃよかったとか、食べるのをやめるとか、
そんな選択肢はないな、多分あたしにはないな。
成熟とは、食べたかった木の実を食べたその後の事なのか。
そーいえばアダムとイブはそれでエデンの園を追放されたよな。
岐阜に到着。
とりあえず答えは見つからず、
探している事を忘れないように覚えていようと、
思ったのでした。
2009年3月18日ちづえ14世
※ちづえ14世さんは現在存命中です。ちづえ14世さんの一般公開遺書アーカイブはこちらです。
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