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やすのりさんの遺書

伊藤準規に憧れて・・・

「ピッチャーやりたいんだろ」
「う、う、うん・・・。」
歯切れの悪い返事。顔も曇る。
「だったら、コーチに言ってみたらどうだ?」
「だってピッチャーもう3人もいるんだよ」
「でもやりたいんだろ?コーチに言ってみろよ」
「うん・・・・。でもやっぱり言うに言えん・・・。」
私とキャッチボールをしていても
「父さん、座って」
と、すぐピッチング練習をしたがる。
息子は中日ドラゴンズの伊藤準規に憧れていた。
「チームに3人もいるんだから、もう無理だよ。なりたくてもなれっこないよ」
息子はふ~っと深いため息をつき、遠くを見つめた。

しかし、この前の練習の終わりがけに、
息子はコーチから思いもよらない言葉をかけられる。
「今度の試合、ピッチャーだからな」

「父さん今度僕、ピッチャーだって」
何でもないような感じで、私に言いに来たが、
嬉しさがありありと伝わってくる。
「でも心臓がバクバクいってる」
と私の手を掴んで、自分の胸にあてた。
「こんな前から緊張してどうするんだ。立浪引退試合の伊藤準規のプロ初登板見たろ?」
「うん」
「伊藤準規どうだった?」
「すんごいかっこよかった」
「伊藤準規もあの時、初登板で緊張してたと思う。でも堂々と0点に抑えたよな。」
「うん、抑えた」
「おまえも今度が初登板だ。伊藤準規みたいになりたいだろ」
「うん、なりたい」
「よし、フォアボールだけは出すな。思い切っていけ」
と、立浪が伊藤準規に送った同じ言葉を息子にかけた。
「うん、わかった。父さん、思い切って投げるよ。」
息子は笑顔に戻っていた。

そして試合当日。
四球で崩れていくだろうという父親の予想に反して、
2安打を打たれたものの、無四球で0点に抑えた。
堂々たる初登板だった。
試合開始の整列の時、自然と緊張が解けたという。
親の知らないところで成長してるものである。

2010年2月13日やすのり

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