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やすのりさんの遺書

オープン戦

「おいおぃ、こんなメンバーじゃ原監督様に失礼やぞ~」
斜め前のYG帽をかぶった中年親父が、大声で野次っている。
その親父は、試合前からずっとビールを浴びるように飲んでいた。
確かにスターティングメンバーが発表されたときは
1軍対2軍の試合じゃないかと錯覚するほど。
3日の中日対巨人のオープン戦、
巨人は開幕スタメンとも言えるような主力中心のオーダー、
一方中日は、若手を中心としたテスト的な要素のオーダーであった。
その日の中日先発は将来のエース候補、伊藤準規。
「伊藤って誰だ?オレ様が知らないんだから、たいしてことねぇ~だろ」
酔っ払い親父が大声で叫ぶ。
伊藤準規を知らないんか?ちっち、あんた、素人だね
この時点で中日対巨人というよりは、
自分対酔っ払い親父の試合と様替わりした。

その伊藤準規、ストレートは140キロ前半であったものの
落ちるようカーブを効果的に織り交ぜ、強力巨人打線を封じこめていく。
伊藤準規がバッターを抑える度、どうだと言わんばかりに親父に目線を向けた。
あれほど元気だった酔っ払い親父が、回を追うごとに口数が減っていくのが分かる。
実に爽快な気分であった。
結局、伊藤準規は6回を2安打の無失点に抑える文句のない好投をみせた。
試合も8-0で中日勝利のワンサイドゲーム。
「まぁ、バッターはまだ調整段階だからな、しゃ~ねぇ~、しゃ~ねぇ」
酔っ払い親父は捨てセリフを吐くのがやっと、丸まった背中が寂しそうだった。

試合が終わり、帰り際1回だけ親父と目線があう。
伊藤準規っていうピッチャーは覚えておかないと怪我するぜ。
と心の中で親父に声をかけた。

2010年3月4日やすのり

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