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父さんのロレックス

週末は家族で旅行へ行った。
その旅行は年に一度行われていたけど、
ここ数年はお兄ちゃん家の子供が小さかったりなんだかんだで、
ずっと行ってなかった。
だからほんと久しぶり。

天気はくもり。
こんな時期だからしょうがない。
雨が降っていないだけラッキーか。

日曜日は船に乗る。
近江八幡の水郷めぐりを予約しておいたのだ。
それを伝えると子供たちは大いに喜んだ。
「でも雨やったら乗れへんねぇ」
と言うと残念そうな顔をした。
「てるてるぼうず作ってお願いする？」
「するする、てるてるぼうず作る！」
と手頃な紙がなかったもんだから、
ティッシュペーパーを丸めて何個も作った。
ボールペンで顔を書いて、何個も何個も作った。
外では小雨が降っていたり、結び付けるひももなかったりで、
子供たちは枕元において、一緒に眠る事となった。

朝、願い届く。
雨は降らずにすみそうだ。
「よかったね、今日船乗れるよ」
「やった〜、船に乗れる！」
枕元のてるてるぼうずはしわくちゃになって落ちていた。
どうやら役目を終えたらしい。

ホテルを出発する時、
テーブルの上に腕時計が置いてあるのに気づいた。
あかん、忘れたらあかんから腕に付けておいた。
しかしこれロレックスやん。
「このロレックス誰の？」
「しんや（兄）のちゃう？」
「もしかして本物？」
「ウソものやろ」
「やんね」

忘れないようお兄ちゃんに渡したら、
「これ、父さんのロレックス」と言った。

お兄ちゃんは子供たちの父さんになって、
父さんの形見のロレックスを大切に身につけている。
そー思うと私はなんだかうれしくなった。

2010年7月2日ちづえ14世

※ちづえ14世さんは現在存命中です。ちづえ14世さんの一般公開遺書アーカイブはこちらです。