やすのりさんの遺書
ロッテ 日本一
その朝は、虚脱感がまだ抜けきれていなかった。
中日の敗北だけが理由でないことは分かっていた。
「父さん今日ねぇ、すごくいい夢みた」
起きてきたばかりの息子が、目をこすりながら言う。
「ん?どんな夢だ?」
「うんとね、うんとね・・・」
ロッテが日本一になった。
第7戦の試合、4点のビハインドをロッテはひっくり返した。
中日のシリーズ敗因はいろいろあれど、
結局これが出来たチームと、出来なかったチームとの差であった。
この7試合、本当に楽しませてもらった。
心からゲームに酔いしれさせてもらった。
しかしやはり欲を言えば勝ちたかった。
完全制覇をこの目で見届けたかった。
「うんとね、うんとね・・・」
「ん?」
「プロ野球選手になった夢みた」
「ほ~それはいい夢だな」
満面な笑みを浮かべる息子。
緊張と願望が交錯し、顔がこわばりながら切り出した。
「で、どこのチームなんだ?」
「うんとね、中日」
これですべてが救われた気がした。
2010年11月8日やすのり
※やすのりさんは現在存命中です。やすのりさんの一般公開遺書アーカイブはこちらです。
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