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レッド石黒さんの遺書

LP買った

中古も含めるとよくわかんないけど、新品に限って言えばたぶん28年ぶりにLPレコードを買った。
Young Widowsの「Easy Pain」ってアルバム。
カリフォルニア発送で届くのに2週間ちょいかかった。
梱包用のダンボールを開封し、透明のパッケージをビリっと破った時に漂ってきた輸入盤特有の匂い。
ああこれ、この匂い。
懐かしくて泣きそうだった。

そもそもは別にLPじゃなくてもよかった。
SoundCloud聴いてて気に入ったんで、Amazon見てみたら、MP3とCDとLPがあった。
MP3は1500円、CDは1600円、LPは1800円。(送料込、10円台以下省略)
断捨離はじめてからCDって選択肢はほぼなくなったので、MP3で買うつもりだったのが、LPと300円しか違わないことで迷いが生じた。
待てよ、最近のLPにはMP3をダウンロードできる認証コードがもれなく同封されてる。
ってことは、MP3に300円プラスすることで塩化ビニール盤のおまけがついてくるってことではないか。
食玩的な発想の転換。
特典映像ならぬ特典塩化ビニール。
そうしてLPのページで購入ボタンをポチっとしてしまった。

今から30〜40年前、雑誌で読んで、ラジオで聴いて、気に入ったらレコード屋さんに足を運んでアルバムを買うって行動パターンが自分の中にあった。
限られた小遣いの中で、月1、2枚のアルバムを厳選して購入するのが楽しみでもあった。
CDというものが世に出現してからは、あまり気に入る音楽と出会う機会がなくなったせいもあり、レンタル屋に置いてあるものを聴けばいいか的な思考になっていった。
それが近年インターネットで気軽に音楽が聴けるようになってからは、時間さえあれば気に入る音楽を見つけられるようになった。
なにせインターネットには世界中の膨大な数の音楽が溢れている。
かつての「雑誌・ラジオ → レコード屋」という行動パターンは「ブログ・SoundCloud → Bandcamp」に置き換えられた。
(AmazonやiTunesじゃなくてBandcampなのはなんとなくアーティストの取り分が多そうな気がするからってだけで確証はない)
少年時代の、音楽のある生活が戻って来た気がしていた。

ただそれは気がしてただけだったんだなって今は感じてる。
レコードプレイヤーの前で、座して音楽を聴きながら。
30cmもある正直邪魔なレコードジャケット。
20分もしたらブチって音とともに強制終了するんで、聴きながら仕事や読書に集中することもできない。
しかし、だからこそ音楽に集中する。
邪魔なレコードジャケットを両手に抱えて。
なんだか禅の修行のような気すらしてくるんだけど、それはそれで不思議と心地いい。
ある種の重みと言うか、その重力のおかげで解き放たれる何かがあるような。
そんな感覚すっかり忘れてた。
自由ってのは快適さや便利さの先にあるんじゃなくて、案外こうした苦行の中にこっそり隠れているものなのかもしれない。
Young Widowsの楽曲が般若心経に聞こえてきた。

2015年6月14日レッド石黒

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