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レッド石黒さんの遺書

AISDDAS

「ねえアネモネ、あたなは欲望ってものがないんでしょ? スーパーマーケットの中で生まれたものだから、何が欲しくて何が食べたいのかわからないのよ・・・」
(村上龍「コインロッカー・ベイビーズ」より)

◎AIDMA(ローランド・ホール)の消費行動プロセス
Attention(注意)→ Interest(関心)→ Desire(欲求)→ Memory(記憶)→ Action(行動)

◎AISAS(デンツノイドの登録商標)の消費行動プロセス
Attention(注意)→ Interest(関心)→ Search(検索)→ Action(行動)→ Share(共有)

昔AIDMA、今AISAS。
現代のマーケティングはインターネットの台頭によって「検索」と「共有」が重要な役割を担うようになったようです。
AISASの長所は、「行動」の後に「共有」が発生することで、また次のAISASを生み出すという循環機能にあると思うのですが、情報のスーパーマーケット化が極度に加速すると、その循環機能がうまく作用しなくなるような気がします。
簡単に手に入るものに共有する価値はなかなか生まれないんじゃないかと。

コインロッカー・ベイビーズのアネモネ同様、AISASには「欲求」のプロセスがありません。
根源的な「欲求」を支えるのは「飢え」ですが、ネット上の豊富なコンテンツと精度の高い検索エンジンをもってすれば、情報に対する飢えは「検索」というプロセスによって容易に解消されてしまいます。
よって適度な「飢え」の状態をつくりだすことが、マーケティング上はけっこう有効なのかもしれません。

北野誠の話題があれだけ盛り上がったのは、どの発言によって芸能活動を自粛せざるをえなかったかが明らかにされなかったためじゃないでしょうか。
検索してもはっきりとはわからない。
ただいたるところにヒントがあった。
だから掲示板やSNSで議論が白熱し、相乗効果をもたらしていった。

あえてAISASになぞらえれば、AISDDAS(詠み方知らず)って感じでしょうか。
2つのDは「Desire」と「Discuss」です。
検索して満たされないから欲求が高まって議論に至るというプロセス。
そのような手間ひまをかけたものには共有する価値が十二分に生まれるという。

4月から2期の放送がスタートした「涼宮ハルヒの憂鬱」。
新聞の全段広告使って2期決定の告知がされたのが2007年7月だから、それからおよそ2年弱の年月が経ってるのに、その間全くといっていいほど番組に関する情報が流通しませんでした。
そしてようやく始まったと思ったら、今放送されてるのはなぜか1期の再放送。
でも番組欄には再放送を表す「再」のマークがついてないため、未だにネット上でいろんな憶測が飛び交っています。
冷静に考えればものすごく不親切な話ですが、その「不親切さ」が意図的なマーケティングであることは明らかで、それがどのような結果をもたらすかは非常に興味深いところです。

とまあなんでこんなことを真剣に考えてみたかというと、マスコミにほとんど報道してもらえないという泡沫候補の宿命的な弱点も、うまくやれば逆手にとることができるんじゃないかって気がしたからです。
そんなわけで名古屋市長選まであと3日です。

2009年4月23日レッド石黒

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