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1年後の命運

「アナログ放送終わらないから安心しなよ」と言ってしまった。
たまたまうちの母親が「そろそろテレビ買い替えなきゃねえ」と話題を振ったからだ。
確かに最近ブラウン管の上部がぶれるようになってきたし、買い替え時と言えば買い替え時なのかもしれない。
しかし観られないわけではない。
水戸黄門の活躍も、フレンドパークの盛り上がりも、「アナログ」の烙印さえ気にしなければちゃんと伝わってくる。

結果的に普段ほとんど口を聞かない息子が言葉を発したのがまずかった。
「業界（単なる思い込み）で働いている息子が満を持して言うんだから間違いない」という空気をその場に作ってしまったのだ。
きっと母親はこのためにこつこつ貯めてきた年金を早速旅行かなんかですっぱり使ってしまうに違いない。
そして1年後、水戸黄門も関口宏も画面から消えてしまった時、いいかげんなことを言って煽動した息子を恨みながら残りわずかな人生を過ごしはじめることとなる。

「メジロマックイーンは鉄板だ」と思っている時と、実際マックイーンの馬券に大枚をつぎ込んだ後とでは、確実に心境が変わる。
4コーナー回って、もしトウカイテイオーが大外から豪快な差し足で抜き去っていったらどうしよう、という思いが鮮明な映像付きで浮かんでくる。
京都の3200mでそんなことはありえない、と99％確信しつつも、「万が一」を想像し、恐怖してしまう。

母さん、今息子はそんな心境です。
今から1年後の正午、もし万が一テレビが真っ暗になって大好きな関口宏の笑顔が観られなくなったら、それはすべて息子の責任です。
ごめんなさい。

2010年7月24日レッド石黒

※レッド石黒さんは現在存命中です。レッド石黒さんの一般公開遺書アーカイブはこちらです。