ekkoさんの遺書
長編・大須の恋の物語。
最近、実家の妹が断捨離っていうものに目覚めたようです。
いらなくなったモノ、使わないモノ、使わないだろうなってモノなどを、思いきって捨ててしまう
そして、買わない・・・手に入れない、スッキリさせるってことらしいのですが・・・性格的に、私は全然ダメでして・・・
先日、実家に帰ったときに・・・大量のブタ の置物が、ゴミとして処分されるところでした。
ブタ の置物・・・私が、大好きで集めていたモノ。
私は、昔から大須の街が大好きです
先日も大道町人祭に2日間・・・ガッツリ行ってましたし、何の用事が無くても、月に1回必ず行くほど大好きな場所です。
大須の街の人たちは、みんな人柄もよくて・・・温かくて・・・。
ブタ のグッズを集め始めたのも、大須のお兄さんを大好きになったことが・・・きっかけでした
それは、私が20~22歳頃・・・みんなから、ぶーちゃんと呼ばれていた、私より1コ上の古着屋の店員さんとのお話です。
たまたま、入ったお店の店員さんで・・・ルックスもそんなに、カッコいいわけではなく(ぽっちゃり&がっしり系)愛想も良いほうではなく・・・。
私が試着したGパン を「それは、あまり似合わないと思う・・・」って言われて、カチン と、きたのが第一印象でしたね。
だけど、私は気に入ったから・・・ぶーちゃんの言うことを無視して、そのGパン を買ったんです。
あるとき、久々に大須へ行ったとき、たまたまその店の前を通ったんです。
すると・・・ぶーちゃんが、わざわざ外に出てきて「似合いそうなGパン 入ったよ」って、笑顔で声をかけてくれたんです。
私のことを覚えてくれていたのと、本当は優しい人だったことに、テンションが上がって しまいました。
その後・・・大須に行くときは、必ずそのお店に立ち寄ってました。
たまに、違う店員さんもいたけど・・・お構いなしで、ぶーちゃんに会いにいってたな・・・。
ぶーちゃんは、いろいろなことを教えてくれたり、いろいろと私に注意をしてくれました。
ファッションのこと、仕事の愚痴ばかり言ってたこと、ライブばっかり行って親にお金を借りてたこと・・・いっぱい注意された。
でも当時は、好きだって感情とは気がつかなくて・・・ただそれが、すごくうれしかったんです。
ぶーちゃんが働くお店の店長Yさんは、以前芸能関係の仕事をしていた人らしくて・・・いわゆる美男美女のお客さんが多かったんです。
そんな中だと、私のようなキャラは浮いた存在で、いつの間にかその店で「久本」(いつもうるさい感じやルックスも似ていたらしい )と言うあだ名で、私は呼ばれるようになっていました。
いつも、芸人さんのようにいじられキャラだった私・・・だけど、それはそれで、楽しかったんです。
でも、あるとき・・・ぶーちゃんは、私に言いました。
「久本は・・・久本だけど、お客さんなんだから、もっと怒ってもいい」って・・・「いろいろ言われて、悔しくないのか」って・・・。
もともと・・・店長のYさんとぶーちゃんは、あまり仲が良い感じではありませんでした。
ぶーちゃんも、チャラチャラした感じではなく・・・古着と大須が好きな、どこにでもいるようなお兄さんでした。
「もう・・・あまり店には、来ないほうがいい。服もいっぱい買ってもらったから、今度は好きなライブとか楽しいことにお金を使え」って言われてしまいました。
今考えてみたら、あの時から・・・ぶーちゃんは、お店を辞めるつもりだったのかな?って・・・。
それからです・・・私は、本当はずっと前から、ぶーちゃんのことが大好きなんだと気がついたのは・・・。
それからは、猛攻撃でしたね・・・
夏祭りや秋の大道町人祭のときは、差し入れして・・・平日、お店が暇そうなときは、会社帰りに手伝ったり、クリスマスのときも、ケンタッキー片手に閉店までお店に入り浸り・・・初詣のときも顔を出し、1月の後半のぶーちゃんの誕生日には、わざわざ好きなブランドを調べ、東京から服を取り寄せてプレゼント したり・・・そして、いよいよバレンタインデー
友だちに協力してもらい、徹夜で手作りケーキ を作り・・・手紙を書いて告白をしました
「ぶーちゃんは、私にとって古着屋のお兄さんじゃなくて大切な人です。だから、付き合ってください。」
後日・・・返事をもらいに、お店へ・・・結果は、ダメ
「ありがとう・・・ケーキおいしかった。悪いけど、付き合うことはできない。」そうやって、ハッキリと断られました
彼女いないって、言ってたのに・・・いろいろプレゼント したり、頻繁に通ったり、相談にのってもらったり・・・全部、迷惑だったのかな?
そのことだけが、頭の中をぐるぐるぐるぐる・・・仕事も手につかないほど・・・本当に、落ち込みました
その状況を見かねて、友だちがぶーちゃんに会って話をしてきてくれました。
ぶーちゃんは、私の気持ちをずっと前から知っていたのです。
私が、いろいろなことをして・・・ぶーちゃんの気を引こうとしていたから・・・ぶーちゃんも、すごく悩んでいたそうです。
店長のYさんからも、いろいろからかわれて「久本と付き合ってやれば・・・?」とも言われたって・・・。
ぶーちゃんも、私のことを店員とお客さんて感覚じゃなくって・・・妹のように、ずっと思っててくれたそうです。
「付き合うことは、簡単にできる・・・だけど、妹のようにしか思ってないのに、付き合うのは・・・久本が、かわいそうだ」って・・・。
すごく真剣に、考えてくれていたことに・・・私は、うれしくてたまらなかったです
だから・・・前みたいな関係に戻れると思ってたし・・・もっともっとぶーちゃんを大好きになったし・・・少しでも、長く会いたいから、大須で暮らすことも本気で考えました。
だけど・・・ぶーちゃんは、突然お店を辞めてしまったのです
「大須と古着が好きだから、働いている」って言ってたのに・・・何も言わず、私の前から消えたのです。
最後に・・・店長のYさんから「ぶーちゃんから預かった」と小さな紙切れを渡されました
「いろいろ、ありがとう。 楽しかった」って書いてあり・・・そして、隅っこのほうに、住所と名前が書かれていました。
もう、泣けて泣けて・・・たまらなかったけど、1個だけ・・・笑顔になれたことがあった。
ぶーちゃんの名前は、ブタ さん(見た目)みたいだからじゃなくて、名前から(ホンブさん)だったんだって・・・。
会いたいから、住所をたよって家まで行こうとしたり、初めて付き合った彼氏にもバレるぐらい引きずってたけど・・・いろいろガマンしました。
もう・・・これ以上迷惑は、かけたくなかったから・・・良い妹のままで、いたかったから・・・
あれから・・・半年以上、大須に行くことができませんでした。
大須には、ぶーちゃんとの思い出が、いっぱいで・・・つらすぎて
でも、いつまでも引きずっていられないし、あの店の前を通らなければいいんだし・・・忘れられる、大丈夫と思ってすごしてきました。
それから・・・2年以上経った頃だったかな・・・大須以外の場所で、あの店長のYさんにバッタリ会ったんです。
「久本~、久しぶり。元気だったか?」
そんなあだ名を言われたのも、久しぶりすぎて・・・笑ってしまいました。
大須のあのお店は、完全に閉店して、Yさんは違う職業についているとのことでした。
少し話をしてから・・・別れ際に、小さな声でYさんは私に言ったんです。
「ぶー、結婚したらしい。」って・・・。
私は固まってしまった
ぶーちゃん、結婚したんだ・・・
「久本・・・大丈夫か?」Yさんは・・・心配そうに、私の肩をポンと叩いてくれて・・・たぶんそのとき・・・私は一生懸命、笑っていたと思う
そして・・・左手の指輪を見せて「Yさん、私も・・・夏に結婚するんです。」と伝えました。
Yさんの・・・あのビックリした表情を今でも忘れないな・・・。
きっと・・・あの時ぶーちゃんには彼女がいて・・・仕方ないから、いろいろとごまかして、くれていたのかな?
でも、プレゼントにあげた服も、何回も着てくれてたし・・・差し入れとかも、本当に喜んでくれたし・・・ちゃんと、私のことを考えてくれてたのかな?
今でも・・・大須に行くと、よみがえってくるんです。
1番何もかも一生懸命だった、あの頃の記憶がハッキリと・・・
ぶーちゃん、私は・・・今でも大須が大好きです
大須の街を好きな人と結婚したから、子供たちも大須が大好きです
ブタ の置物は、捨ててしまうけれど・・・私は大須の街が、きっとこれからも・・・大好きです。
めっちゃくちゃ長くなりましたが・・・これが私の大須の恋の物語でした
2011年10月29日ekko
※ekkoさんは現在存命中です。ekkoさんの一般公開遺書アーカイブはこちらです。
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