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悪狗陀 狸人さんの遺書

ほんとうのこと

友人グロさんが僕に、
「奴隷市場」というトーキングアートのユニットをやってみようと、
長良川の鵜飼いの船で話したのが去年の初夏。

なんとなく魅かれるフレーズだったけど、
いま、彼の言う「奴隷」のニュアンスがリアルな現実になってきた。

「奴隷」とは、三角貿易でアフリカの奴隷海岸から連れて来られた
ロイクな人たちの様なことでない。
「奴隷」であることを認識しないでプチハッピーに生活し、
世界に対してひとかけらの疑問も持たずに死んでゆく
彼らを指すのでは、と僕は思っている。

たとえば、昨年の食品の偽装メニュー事件。
「奴隷」は偽装と知らず、美味い美味いと食べていれば
プチハッピーなのでR。
ほんとうのことを知ってしまったが故の、
「騙された!」なのでR。

たとえば、偽ベートーベン事件。
彼が聾啞で、被爆2性で、長髪でサングラスをかけて、杖をついて、
黒い小ギレイな服を着ている、
という偽りの「物語」を信じている人にとっては、
ゴーストライター作品を聴いてプチハッピーなのでR。
ほんとうのことを知ってしまったが故の、
「騙された!」なのでR。

人の為と書いて「偽(り)」と読む。
と僕の脳内師匠は教えてくれた。
偽りは、常にいいひとな美談を伴う。
「ほんとうのことを知りたいだけ〜」、
「ほんとの真実がつかめるまでキャリーノン!」と
80年代のヒップスターは歌った。
なるほど、僕も「ほんとうのこと」を知りたいと思い
いままで生きている。
しかし、「ほんとうのこと」を知らなくてもいい
「奴隷」も世界には多勢いる。

偽ベートーベン事件の直後、ゴーストライター氏について
マスコミと違う論をツイッターやネットで公開した人の1人に、
伊東乾氏(イトケンシュタイン)という東大物理出身の音楽家がいた。
彼の書く「ほんとうのこと」には読んでとても納得した。

ところで、偽ベートーベン事件とオウム真理教事件には、
少なからぬ共通項があるなぁ、と思っていたら、
前述の伊東乾氏は、
オウムの豊田被告と東大物理のクラスメートだったそうで、
彼の著作に『さよなら、ネイビーブルー』という
オウム関連本があった。

なぜ、東大物理の頭脳を持った豊田が
偽りの宗教に引かれていったのか、とてもよく書かれている本だ。
彼は「ほんとうのこと」を求めて偽りの世界にいってしまったのでR。

金八先生世代の受験戦争戦士の我々は、中学の頃、
「なぜ勉強するの?」という命題を大人に投げかけた。
校舎の窓ガラスも割った。バイクも盗んだ。自動販売機の
缶コーヒーは100円玉で買えた。(笑)
その答えは大人達からは返って来なかった。

僕は思う。
その答えは「生き抜く」為でR。
勉強しないと偽りの世界に住んでしまう。
何度も言うけど「ほんとうのこと」が知りたいのだ。

という訳で、いまは素粒子のはなし
『小さな宇宙をつくる』という本を読んでます。(笑)


*写真の解説
「なにわのベートーベン」の髪の毛は「偽」です。

2014年2月27日悪狗陀 狸人

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