悪狗陀 狸人さんの遺書
県民劇団終わりました。
5/27に県民劇団ほしぞら☆サーカスは解散しました。
短い期間ではありますが、
アマチュアの参加メンバーと
稽古で楽しい時間空間を共有できたことに感謝しています。
ありがとうございました。
解散の原因は制作予算のことです。
もともと、県民劇団育成事業について
SPAC側、演出の和久田、参加メンバーの間で
思い違い、ボタンの掛け違いがあり
それに気づいた段階で僕が修正をはかろうとしたのですが、
文化行政の壁、
お金の問題にぶちあたってしまったわけです。
もともとこのプロジェクト自体に
構造的な無理があったことは否めないし、
主催SPAC担当者の演劇制作に対する知識レベルも低く
一緒にモノをつくるレベルではありませんでした。
いずれにしても、昨年度までの県民劇団事業の
問題を解決していない、
担当者間の引き継ぎがきちんとなされていない、
お金の問題をプレゼン時にきちんと開示していない、
など、SPAC側にも問題はあったんだという認識でいます。
さて、稽古の総括もしておきたいので以下に記します。
今後の演劇活動の参加になればと思います。
もともと、東京の小劇場などで
演劇的な活動(演者、作家、演出)をしていたのですが、
30代後半に鍼灸のライセンスを取ってから
また違ったカラダの見方ができるようになり、
今回の稽古方法もそれを加味したモノになりました。
簡単に言えば、若い頃に比べて稽古の狙い、方法が
自分の中で変化してたことに気づいた訳です。
たとえば、「立つ」という稽古。
無対象で「食べる」という稽古。
この二つは動物として生きる為の根源的な行為
「個体維持」であります。
そして、老人の初恋モノローグエチュード。
「恋」は動物としての「系統維持」のために人間に与えられた
ファンタジー(妄想)であります。
原初人間に備わっているところ、をつつくのは
演劇的な稽古の基本だと思います。
稽古内容
□ 「立つ」「歩く」「みんなで立つ、歩く」
非日常空間で立つ、これができればすべてオーケー
なんですが、これができない。
日常生活で立つことに意識が向いてないから。
□ 「ジョンとジョー」
今は亡きアゴタクリスロフの台本。
台詞のキャッチボールができるかどうか。
意外にできない人が多かった。これも基本。
人の話を聴いて、それに反応する、これができない。
自分勝手な言い方、人の話を聴かないって人が多い。
□ 絶叫!
息を全て吐ききるまで自分の中のモノを出せるか、
これも我慢できずに途中やめする人が多かった。
高校生のNちゃんはうまくできたが、その後
カラダに起こる変化で(無意識に)泣き出してしまった。
□ ポチ
言っていい台詞は「ポチ」だけ。
家に帰って来たらポチがいない。
さあ、どうする?というエチュード。
□ 背中合わせて二人で立つ
拮抗する力の共同作業。よくワークショプでやるやつ。
省略。
□ シニアの初恋エチュード〜恋の歌独唱
70代後半のお婆さん達に初恋の話をしてもらい、
初恋の人の名前を呼び、恋の歌を歌う。
なんだか良かった。
□ 最後の晩餐(無対象)
明日、死ぬかもしれない、という状況設定で
最後の夜に何を食べるか、どう食べるか、
というエチュード。
お婆さん達も、高校生もよくできた。
「喰う」というのはその人が見える。
□ 悪のエチュード「コンビニ強盗」
悪いことをやってみな、と国立大の演劇部の学生に。
コンビニに押し掛けて自分が「悪」だと思うことを
やるエチュード。これ、学生さんはできない。
「悪」ができない。
□ 梅干しフリーク
昔、小劇場でやったネタ。すっぱい梅干しを持ち寄り、
自慢してからみんなで食べる。
「すっぺえなあ、こりゃ〜!」って叫ぶ。
無対象ですっぱい表現をする。
□ うなぎでてこい
うなぎを探す。これも無対象、
台詞は「うなぎでてこい」だけ。
カラダの動きのおもしろさが必要。
□ タルコフスキーの鏡
これもよくやる稽古、合わせ鏡。
人の動きをきちんと観ることができるか、という。
あと、そこからのずらし。
□ 戦争は悲しいね〜「この道」合唱
上演予定だった台本の背景に核戦争の世界があって、
戦争体験のない若者(もちろん、僕も)に
お婆さんが台湾での戦争体験、引き揚げ体験を語る。
お婆さんは音楽の先生だったので、
指揮をしてもらって「この道」の合唱。
引き揚げ船での夜の水葬の汽笛の音、三発。
聴こえた気がした。
□ 効果音で感情表現
メロディオンでプラスの感情、マイナスの感情を
音で表現し、それに合わせてエチュードをする。
□ 『私の青空!』本読み
解散を決定したその日の稽古で、
上演予定だった台本をみんなで読む。
劇団のお葬式。
この台本は名古屋が生んだ天才劇作家、
北村想の作。
最近の小劇場の人たちは北村氏のことを
知らなくなったけど、語り継ぎたい名作。
いまでも上演したかったと悔やまれます。
非常におもしろい稽古だったし、
真摯に向かってきてくれた方には
心から感謝したいと思います。
どうもありがとうございました。
ほしぞら☆サーカスは解散ですが、
それぞれの演劇は続きます。
またどこかで会える日を楽しみに。さようなら。
2012年6月6日悪狗陀 狸人
※悪狗陀 狸人さんは現在存命中です。悪狗陀 狸人さんの一般公開遺書アーカイブはこちらです。
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