悪狗陀 狸人さんの遺書
ラーメンとは都会の食い物でR
東京に行くとラーメンが喰いたくなる。
つうか、浜松にはうまいラーメン屋が少ない。
(べんがらの「進龍」もいつの間にか閉店、
おいしかったのに)
もしかしたら、ラーメンというのは
都会の食べ物じゃないのか、と最近思うようになった。
あの喧騒、ごみごみ感、空気の悪さ感、
せちがらい感、なんかが人をラーメンへと誘うのかもしれない。
最近、おもしろいラーメン体験をしたので
聴いてください。タイトルは「覆麺」。
その店は神保町の交差点から
すこし奥に入った裏道にあった。
引いてみれば普通の民家、
寄ってみるとオレンジ色に窓や扉が塗りつぶされている民家。
ここってなに?
この街の事情通が僕に言う。
「ここ、ラーメン屋なんだよね」
「そうですか」
「覆面のレスラーがつくってるの」
「…。……(噴き出し笑)」
その店の名は「覆麺」。
僕は中の見えない
オレンジの引き戸を右に開けた。
カウンターだけの席は満杯。
黒いTシャツに、白いデストロイヤー型のマスクを被った
太鼓腹の男がひとり、ラーメンをつくっている。
よくある自販機でメニューを選ぶ。
まぜそば覆麺(汁なし)が気になったが、覆麺(醤油)を押す。
覆面=覆麺だ。
蛍光灯の明かりだけが妙に明るい静かな店内。
まだ店の空気と流儀を掴みかねている僕に、
時々、覆面とお客の会話が聞こえてくる。
「どう?20辛」と覆面が訊く。
カウンターの横の席の大学生風が
赤く染まった汁を啜っている。
「ぜんぜん大丈夫っす。まだいけますね」
「彼ね、一番なんすよ」
と覆面が初めて僕のほうに顔を向け話はじめる。
「会員が1万8千人いるんすよ。辛いの彼が一番」
ごちそうさまと席を立った彼に、
覆面から赤いカードが手渡される。
赤いカードには銀のシールがいっぱい貼ってある。
大学生風は誇らしげにカードを手に取った。
あ、オレもカードが欲しい。
どうやら、会員制のラーメン屋に入ってしまったみたいだ。
「はい。醤油ね」と出てきたラーメンは、
海系のダシの効いた東京風ラーメン。
縮れた麺の上には、
うずたかく盛り上がったもやし(だが、二郎ほどではない)。
チャーシューは箸で触れるだけで崩れる。
うまい。
覆面だけに目がいって、覆麺の本質を見落としてはいけない。
厨房の壁を見上げると、
「80%スープを飲んだら会員」との張り紙。
僕はまだこの店の会員ではない。
カードが欲しい。
あのカードを覆面から手渡されたい。
果たして、黒いスープを完汁し、
店を出る僕の手には黒いカードが握られていた。
*東京方面の方はぜひ体験されたし。
月〜金は会員のみみたいです。ご確認を。
27日(土)にはついに覆面を取るとか?
2010年2月23日悪狗陀 狸人
※悪狗陀 狸人さんは現在存命中です。悪狗陀 狸人さんの一般公開遺書アーカイブはこちらです。
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